災害と医療
仙南病院 早坂 弘人
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月経困難症
同済病院 名取 徳子
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免疫のお話
同済病院 三浦ヨウ子
食塩と高血圧
仙南病院 内科 非常勤 遠藤 義晃
昭和30年代、秋田県の脳出血患者数は人口当たり世界で最も高いと言われていました。様々な要因がありますが、食塩の過剰摂取が主な原因と考えられました。同県立の脳血管研究所が設立され「漬け物、みそ汁の摂取に気を付けよう。めん類のスープはなるべく残そう」という県民運動が行われました。その結果、栄養状態の改善にも寄与したと言われますが、脳出血発生率は劇的に低下しました。
南米アマゾンの秘境に住む「ヤノマモインディアン」は、食塩の摂取量がきわめて少なく(ノー・ソルト・カルチャー)、アメリカの研究者が調査したところ、高血圧患者は皆無でした。
食塩(塩化ナトリウム)と血圧が関連することは以前から想定されてきましたが、詳細はいまだ不明です。昭和50年、アメリカのブレンナーは、(筆者にとって最も魅力的な)仮説を立てました。それは、身体に入ったナトリウムを腎臓から排泄するためには、一定の高血圧が必要であるというものです。彼は、いろいろなタイプの腎性高血圧や内分泌性高血圧症で研究しています。すなわち、ナトリウムを排泄するための血圧は、高血圧の種類によって異なり、もしかしたら個人個人によって異なるのではないか、ということです。以前から、食塩摂取の多い黒人や日本人は白人と比べて、減塩によって血圧が低下しやすいことが知られています。
とりあえず、大部分の人は食塩摂取量を少なくすることにより、高血圧の予防と改善の割合が高まるのではないかと思われますので、自分の健康は自分で守りましょう。
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明るい未来と医療
角田ふれあいクリニック 井上 晴之
人(ひと)の体(からだ)は、約30億年前に、母(はは)なる海(うみ)より誕生し、進化してきたものと言われています。
その証拠に、海の塩分濃度と、人の血液の塩分濃度は、0.9%で全く同じなのです。皆さんが病院で受ける点滴は、0.9%の生理食塩水といわれるものです。
また人は、その進化の過程で、まわりの環境とともに、いっしょに生きてきました。人の体には、もともと自ら治ろう(治癒)とする仕組みがそなわっており、ですから、人がまわりの環境とともに生きている限り、自然に治癒していく力(ちから)を持っています。
例えば日本(人、角田地域)の、長年の伝統的な、食事(しょくじ)・食生活や生活(せいかつ)の仕方・生活様式が、その地域の人の体によく合うように、体のしくみがそうなっています。
人は時々(ときどき)、病(やまい)にかかります。風邪を引いたことが無い方はいないでしょう。しかし、普通(ふつう)の風邪は、人の自然治癒力で治ってしまいます。それでも治らない時は病院へ行きます。
ですから病院・医院は、必要なときだけ受診すれば、それ以外はできるだけ医療機関から離れ、人が元々持っている治ろうとする力(治癒力)にまかせればよいと私は思っております。医学・医療とは、太古の昔から、そうしたものでした。
病院と医院はともに連携して、皆さんの体(からだ)を守るシステム(しくみ)がありますから、安心してください。大丈夫です。
それくらい人の体はすばらしいものです。
私は、人の体は例えれば、一つの″小宇宙(うちゅう)〟のようなものだと思っています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)なみの快挙でしょうか。
万緑や角田の町にみちみちて
この科は専門外です。
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みなさんの中で「看多機」と聞いて、パッとイメージの湧く人はまずいないでしょう。平成29年12月の本欄に「小多機」の説明はありました。「小多機」とは小規模多機能型居宅介護の略で、介護保険における地域密着型サービスのひとつです。自宅などへの「訪問」と小規模な施設への「通い」や「泊まり」といったサービスを必要に応じて柔軟に組み合わせて提供できる事業所です。最大29名が登録できます。全てのサービスを同じ事業所が行うため職員達と顔なじみになり、ご家族を含めお互いを良く知る事ができて安心です。
「看多機」はこの「小多機」の頭に「看護」が付いたものです。すなわち看護小規模多機能型居宅介護の略です。看護師が基準以上配置されますので「小多機」に比べ、より医療ニーズの高い方々にもご利用頂けます。したがって病院という閉ざされた環境でなくても、より自由度の高い住居(有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など)や自宅での生活が可能となります。また、家で最期を迎えたいと望んでも、種々の医療行為が必要なためにそれが叶わなかった方などにも適しています。
次に訪問看護ステーションです。かかりつけの医師がステーションに直接指示を出し、看護師がご自宅や住居にお住いの患者さんを訪問して医療・看護を提供します。患者さんの情報は指示を出して下さったクリニックなどの先生に逐一報告され、常に連携が取られます。地域のどの医師にみて貰っていても医療機関を替えることなく利用することができます。
国はできるだけ入院患者さんを減らそうとしています。色々な病気をもっていても、「在宅」(自宅や住み慣れた地域の住居系施設)で生活することを勧め、そのサポート体制を作ってきています。「看多機」と「訪看ステーション」は、この方向性を実現する大きな柱となっています。
分かりにくいお話でしたが、これからとても重要になるシステムです。詳しく知りたい方は、お住まいの市役所・町役場の介護保険担当にご相談ください。
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皆さん「寄生虫」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
懐かしいものでは、お尻にセロハンをペタンとする蟯虫(ギョウチュウ)検査がありました。衛生概念の普及により寄生虫卵の保有率が1%以下に減少し、平成27年度で廃止となりました。しかし、蟯虫は絶滅したわけではなく、子供が夜中にお尻を痒がったり落ち着きがなくなったり、肛門周囲の掻き傷がある時は疑って見てください。
次に広く知られる胃アニサキス症。最近スーパーマーケットの刺身売り場で「衛生には万全を期していますが・・・」という注意書きを時々見かけます。人気のサバ缶ではなく生のサバや鮭などの魚類に寄生しています。幼虫の体長は2~3センチメートルと肉眼で見えるのでよく観察してから食べましょう。
不幸にも胃に侵入された場合は数時間内に激しい腹痛を起こします。胃カメラを使っての虫体の捕獲が必要なので専門医を受診して下さい。
最後に耳慣れない寄生虫を紹介します。平成20年頃より養殖ヒラメを食べた後に腹痛、下痢を起こす人が相次ぎ、調査研究が始まりました。養殖水槽内のゴカイが関与しているらしい?までは判明しています。クドア・セプテンブンクタータという名前で平成22年に新種登録されました。完全冷凍、中心部までの加熱で感染は予防出来ます。
戦後の不衛生、貧困による寄生虫を介した食中毒は生活改善により減少しました。しかしグルメによる高級嗜好が食品を介した寄生虫感染症の増大を引き起こしています。
日本人に新鮮な刺身を禁止するのは無理でしょうが出来る範囲の自己防衛に努めましょう。
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骨と関節のおはなし
国民健康保険丸森病院 副院長 八巻 孝之
二年半前、このコーナーで筋肉を中心に「プロテイン」の話をしました。今回は骨と関節のお話です。
人の骨は全部で206本あり、内側に梁のような鉄筋、外側に非常に硬いコンクリートを纏ったような構造をしています。古い骨は壊され(骨吸収)新しい骨が作られる(骨形成)ということが常に行われ、両者のバランスがうまく整っていることでしなやかな良い骨に保たれます。骨の働きは5つあります。体を支える、大切な臓器を守る、血を作る、カルシウムを貯蔵する、そして、関節を動かすことです。中高年が注意しなくてはならないのが骨粗しょう症と合併して起こる骨折です。骨粗しょう症になると、転んだだけで簡単に骨折するようになります。特に大腿骨頸部骨折を起こすと、生活レベルが落ちるだけでなく、生命予後も低下します。骨粗しょう症の予防と治療は、我が国の人生百年時代構想において、必要不可欠なテーマです。
関節は、筋肉で動く骨同士のつなぎ目です。線維の膜に包まれていて、関節に水が溜まるというのは、この膜の中に溜まることをいいます。骨同士を実際につないでいるのが靭帯です。これは、伸び縮みしない線維のバンドで、これが伸びたり傷んだりするのが捻挫です。関節内の骨の表面を覆う軟骨は、押すと少しくぼむ柔らかいもので、同時に体重を強固に支える強靭さを持つ優秀な組織です。軟骨は30歳を過ぎる頃から老化が始まります。関節の病気には色々ありますが、多いのは変形性関節症と関節リウマチです。変形性関節症は、加齢や怪我で痛めた関節に起こりやすく、軟骨がすり減り、余計な骨のでっぱりができ、関節の動きが悪くなり、痛みが出てくる病気です。関節リウマチの原因は十分わかっていませんが、多くの関節で腫れや痛みが続き、徐々に関節が壊れる病気です。関節を守る基本は、良い動きを保つことと関節を動かす筋力を保つことです。
文字数に限りがありますので、続きは私の診察室で。3回目の寄稿依頼があれば、次回は神経とまとめのお話をしたいと思います。
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「雨が降ると膝が痛い、古傷が痛む」
「台風が近づくと頭が痛い」
そういう人が時々います。本当でしょうか?
実は「天気」と「痛み」には深い関係があります。天気の影響を受けやすい病気として片頭痛、頸椎症・腰椎症、頸肩腕症候群、変形性膝関節症、関節リウマチなどが知られています。
特に片頭痛の患者さんには「天気」はとても重要なキーワードです。片頭痛は「ズキン、ズキン」と脈打つような痛みが特徴的な病気です。名前のように片側だけ痛むこともありますが、吐き気がしたり、頭全体が痛むこともあります。中には、頭痛の前にジグザグとした光が現れるような前触れを伴うことがあります。
片頭痛の治療には「頭痛があるときの治療」と「予防するための治療」があります。月に10回以上頭痛薬を飲む人は予防的治療が必要です。重い頭痛があって市販の鎮痛剤を頻繁に服用している方はぜひ医師に相談してみてください。
片頭痛を起こすきっかけ(誘発因子)として、ストレスや疲れ、月経、天候、赤ワイン、チーズ、チョコレートなどが知られていますが、中でも気圧・気温の影響が大きいようです。
「台風が名古屋くらいになると頭痛がひどい」
私が診ている片頭痛の患者さんは、そう教えてくれます。以前は頭痛日記をつけてもらいましたが、最近では「頭痛―る」というスマートフォンアプリに頭痛を記録するようにすすめています。「頭痛―る」は天気・気圧と日記帳がセットになったアプリで、頭痛が起こりそうな時に「注意!」「警戒!」などと知らせてくれます。自分の頭痛のパターンを知ることで、気持ちも楽になり、前もって薬を飲むなどの対処もできると好評です。自分の「天気」と「痛み」の関係を知ることで楽になるかもしれません。
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日本では高齢化が急速に進んでいますが、年を重ねることに過度に否定的なイメージをもっていませんか。例えば次のように。年を重ねると筋肉が減って筋力が落ちる。疲れ易くなり歩くのが遅くなって、転び易くなる。今まで続けてきた活動ができなくなってしまい、外出の頻度が減って、家に閉じこもりがちになる。気持ちが落ち込んでしまい、それが影響してますます体力が落ちてしまう。
このような変化は、加齢による衰えで、防げないものだと考えがちです。しかし、早期に気付き、適切な対応をとって体力や活動性の維持、改善をはかることができます。
筋肉の衰えは、サルコペニアと言われています。慢性の持病によって起こるものもありますが、加えて、運動不足と食生活の質が大きく影響しています。
現代人は運動不足になりがちですが、若いころから運動する習慣を持ち続けている人は、筋肉量が保たれる傾向があります。しかし、今からでも大丈夫。今より10分多く体を動かすことを目標に始めましょう。手軽なウォーキングをお勧めします。筋力トレーニングやスポーツを加えればさらに効果的です。だれかと一緒に運動するとなおよいですね。
蛋白質不足の食生活が続くと、筋肉量が落ち易くなります。高齢者は肉や魚を摂ることが減りがちですが、筋肉量を保つために十分な蛋白質を摂る必要があります。また、ビタミン類をバランスよく摂ることも大切です。
運動と食生活はお互いに影響を及ぼし合っていて、どちらも十分に配慮することで、筋力、体力を維持、改善することができます。どちらか一方ではなく両方に気を配りましょう。楽しく食べて、よく体を動かして、元気な毎日を長く過ごしましょう。
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台風19号による水害で亡くなられた方に哀悼の意を捧げ、水害に遭われた全ての方にお見舞い申し上げます。
地震と違って水害はある程度予測することができます。角田市では昭和61年の8.5豪雨被害が想定被害でした。しかし今回角田市平野部で前回の300㎜を大幅に上回る400㎜を、筆甫、大張、耕野で500~600㎜と全く経験のない雨量を経験しました。結果はご存知のとおりです。避難準備情報が出されたら移動に時間と手間がかかる高齢者、要介護者のいるご家庭では避難準備を始めて下さい。避難勧告、避難指示と警告は緊急性を帯びます。避難は移動が可能なうちにして下さい。避難しようとしても水嵩が増していて移動困難になることもあり、全戸避難指示発令後数時間で市内の通行はほぼ不可能になっていました。もう自宅の2階に避難して下さい。道路面から2.5m以上の高さのところにいることが必要です。避難所に行く方は寝具、着替え、食料、おくすり手帳、いつもの薬、保険証、血圧手帳、母子手帳、マスクなどは忘れずに。避難所では土足で居室には入らないこと。濁流には下水が含まれ汚物が混じっておりこれが乾くと粒子の細かい汚物を含んだ埃になり、吸い込むと肺炎や気管の病気の原因になります。幸い角田市では、停電、断水は起きませんでしたが、丸森町では停電、断水で大変苦しまれたのはご存知のとおりです。一人1日当たり最低3?(飲み水として1.2~2?、食べ物に含まれる水として0.5?)の真水が要ります。清潔な水を確保するのも大事です。次に、明かりはLEDの懐中電灯が良いです。情報収集のためのラジオなども要ります。避難所の食事は炭水化物中心になりがちです。便秘にも注意してください。トイレを我慢するために水を控える方がいますが、下肢静脈血栓症になりやすくなります。運動不足になりやすいので1日に数回は歩いたり体操したりしてください。気持ちも籠りがちになりますので発散するように心がけてください。想定外が災害です。普段から準備しましょう。
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更年期障害とは
同済病院 産婦人科 名取徳子
更年期は、閉経の前後5年間の合計10年とされ、更年期に現れる多種多様な症状の中で日常生活に支障を来すような場合、これを更年期障害といいます。更年期障害の症状は、①顔のほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)・発汗などの血管運動神経症状、②易疲労感・めまい・動悸・頭痛・肩こり・腰痛・関節痛・足腰の冷えなどの身体症状、③不眠・イライラ・不安感・抑うつ気分などの精神症状から構成されます。更年期障害の主たる原因は卵巣機能の低下ですが、これに加齢に伴う身体的変化、精神・心理的な要因、社会文化的な環境因子などが複合的に影響することにより症状が発現すると考えられています。
更年期障害の診断は、①~③の症状を有し、他の器質的疾患がない場合になされます。そのため、右記に挙げた症状①~③でお困りの方は、一度受診をお勧めします。何科を受診して良いか分からない場合は、かかりつけ医に相談しましょう。更年期障害と症状や好発年齢のよく似た疾患に、甲状腺疾患とうつ病があり、治療を要する場合があります。
治療法は、生活習慣の是正、カウンセリング、ホルモン補充療法、漢方療法、向精神薬の使用があります。特に、上記症状①にはホルモン補充療法、②に漢方療法、③にホルモン補充療法や向精神薬の使用が有効とされています。これらの治療法は、比較的確立されており、特にホルモン補充療法に関しては発癌性があるという誤った知識から敬遠されがちですが、正しい使用法を遵守することで、安全に用いることが出来ます。
女性は、更年期を迎えると脂質異常、骨粗鬆症といったリスクも高まってきます。自分の体調や生活習慣を見直し、何か心配な症状があれば受診する良い機会となることでしょう。
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高齢者では、体重減少や疲れやすさ、歩行速度の低下、身体活動量の低下など心身が衰えた状態(フレイル)や筋肉量の減少により、握力低下や下肢筋、体幹筋などの全身の筋力低下(サルコペニア)がみられます。また、高齢者の多くは骨粗しょう症や認知症も伴っています。
骨粗しょう症は、骨の量が減って弱くなり、転倒すると大腿骨近位部骨折(太ももの付け根)が起こりやすく、高齢者では寝たきりになってしまうことがあります。整形外科で骨折の手術を行い、早期にリハビリテーションを開始し、骨折前の活動性の維持を目指します。
地域包括ケア病棟では、このような患者さんを急性期病棟・病院から受け入れ、回復期のさらなるリハビリテーションを行います。リハビリスタッフ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)はもちろん、主治医、看護師、薬剤師、管理栄養士、介護士、相談員、ケアマネージャー、サービス事業者など多職種のチーム医療により、長年にわたって積み重なってきた高齢者特有の課題をひとつひとつ解決し、ひとりひとりの患者さんについて退院後の自宅での生活について検討します。トイレでの排泄や入浴での浴槽のまたぎ、段差のある玄関先の出入りなど実際の日常生活を想定したリハビリテーションも行い、生活の再建を目指します。
サルコペニア・フレイルの予防のためには、筋肉をつくるために必要なタンパク質(肉や魚、卵や大豆製品など)をしっかりとることが重要です。また、運動とタンパク質摂取を組み合わせることで、より多くの筋肉量と筋力の改善が得られます。低強度の筋力トレーニングでも回数を多く行うことで高齢者でも筋肥大が得られることが知られており、続けていくことが重要です。
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足首の捻挫はスポーツ等でのジャンプの着地の時やランニングの時などに足首をひねってしまうことで起こるケガで、スポーツで起こるケガの中で最も多いものの一つです。フィギュアスケートの羽生結弦選手のケガも足首の捻挫です。
捻挫とは、関節の靭帯(骨と骨を繋ぐスジのこと)が損傷することです。足首の捻挫の多くは足関節を内側にひねって起こることが多いので、足首の外側のくるぶしに強く引っ張る力がかかります。その為、足首の外側の靭帯が損傷され、外くるぶしの前や下に痛みや腫れが現れます。
捻挫は、靭帯の損傷の程度で1度から3度に分けることができます。1度の捻挫は靭帯が伸びる程度です。2度の捻挫は靭帯が部分的に切れた状態、3度の捻挫は靭帯が完全に切れた状態と定義されています。1度の捻挫では軽度の腫れや皮下出血、足首の不安定性が見られ、固定やテーピング等の治療法があります。3度の捻挫になると足首の重度の腫れや皮下出血、不安定性が見られ、ギプス固定や手術等の治療法があります。
捻挫の程度により治療法は違いますが、程度を問わずすぐに現場でICE処置(I-ice冷却、C-compression圧迫、E-elevation高く上げる)を行い、損傷部位の出血を最小限に抑えて、腫れるのを抑えることが大切です。その後に医療機関を受診して、適切な治療を受けてください。
靭帯は治る時に引っ張る力がかかると伸びてしまい、元には戻らないので、正しい治療が大切です。
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糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度(これを血糖値と呼びます)が高い状態になり、これが血管の内面を傷つけ、動脈硬化から様々な疾患の原因となる病気です。血糖値が高い状態が良くないので、様々な方法で血糖値を下げることが糖尿病の治療ということになりますが、ブドウ糖を魔法のように体から消し去ることは出来ません。血液中の過剰なブドウ糖を違う物質に変化させて血糖値を下げるのですが、変わる先は実は脂肪です。つまり、糖尿病の治療をすると体重(体脂肪)が増えてしまうことが多く、体重が増えると血糖値を下げるホルモン(インスリン)の効きが悪くなり、糖尿病が難治性になるという悪循環がありました。
2014年に国内での販売が開始された新しい薬、「SGLT2阻害(そがい)薬」は、体重が増えない糖尿病治療薬という点で画期的と言えます。腎臓で血液を濾過して尿が作られる時、血液中のブドウ糖は一度尿に出ますが、腎臓はそのブドウ糖を尿から再吸収して血液に戻します。SGLT2阻害薬は、この再吸収の働きを邪魔することで、尿にブドウ糖が排出されるように促し、結果的に血糖値が下がります。1日70g程度のブドウ糖が尿に排出されると言われており、体重も3㎏くらい減るようです。糖尿病で障害が起きやすい腎臓を保護する効果もあると考えられています。こう書くといいことずくめのようですが、副作用もあります。薬の効果で尿量が増え、頻尿や脱水症状、膀胱炎などの尿路感染を生じる事もあり、高齢の患者さんなどに使用する場合には注意が必要です。ブドウ糖が排泄されるといっても効果は限定的ですので、他の薬剤との併用や、食事制限も重要です。お薬の選択や変更に関しては、患者さんの病状による「向き不向き」もありますので、かかりつけの主治医にご相談ください。
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年を重ねるごとに「食が細くなった」「疲れやすくなった」「歩くのが遅くなった」と感じることはないでしょうか。それはサルコペニアの前兆かもしれません。
サルコペニアとはギリシャ語の「筋肉」を表す『サルコ』と、「喪失」を表す『ヘ?ニア』 を組み合わせた言葉です。加齢に伴って筋肉が減少する状態で、握力の低下や歩行速度の低下などで自覚、確認されます。人の体内では、筋肉が作られたり分解されたりを繰り返しながら筋肉量を維持しています。この時、作られる筋肉よりも分解される筋肉が多くなるとバランスが崩れ、筋肉量が減ってしまいます。高齢者の場合、たんぱく質の摂取や運動量の減少などにより、作られる筋肉が減少し、分解される分を補いきれない状態となります。また、身体の筋肉量が減少することで、転倒の危険性が高まり、寝たきり状態になってしまう場合もあります。さらに、嚥下筋(飲み込むときに使う筋肉)の筋肉量が低下すると、嚥下障害や誤嚥につながります。こうなると栄養状態が悪化し、筋力の低下が進行します。
サルコペニアはフレイルを引き起こす一因となります。フレイルとは加齢に伴い身体の能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態を意味します。この状態になると、ストレスに対して弱くなり、機能障害や要介護状態になりやすくなります。サルコペニアなどの身体的な問題の他にも、認知機能障害や鬱といった精神・心理的問題、孤立や閉じこもりなどの社会的問題もフレイルを引き起こす原因になります。
フレイルは健康と要介護の中間の時期であり、この段階であれば、努力次第で健康な状態に戻れる可能性があります。いつまでも自分の足で歩き、健康寿命を延ばせるように、筋肉量や筋力を維持する適切な運動習慣と栄養バランスの良い食事で体力の低下を予防し、健康な生活を送りましょう。
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視覚障害者は両眼のうち良い方の眼の矯正視力が0・5未満の例を「ロービジョン(impaired vision)」、0・1以下を「失明(blindness)」と国際的に定義されています。日本の視覚障害者数は170万人前後と推定され、うち20万人近くが失明者です。その原因として、緑内障(25%)、糖尿病網膜症(20%)、変性近視(12%)、加齢黄斑変性(10%)、白内障(7%)の5疾患が4分の3を占め、失明者に限ると白内障の割合は0・5%に低下します。世界全体での視覚障害の第一位の原因は白内障ですが、日本では白内障手術が全国に普及、白内障による失明者の割合は低くなっています。
視覚障害の多くを占める緑内障患者は日本全国で300万人前後、40歳以上の人口の4%程であることが疫学調査から判明しています。緑内障は進行すると重篤な視野狭窄、視力障害を来たしますが、初期に症状はなく健康診断や眼科を受診した際にたまたま見つかる例が一般的です。40歳を過ぎたら眼科検査を含む健康診断を受け、緑内障やその疑いを指摘されたら検査と治療を続ける事が大切です。
糖尿病患者は年々増加し日本全国で1000万人以上、予備軍を含めるとその倍以上と推定されます。糖尿病患者の3割に網膜症を合併、糖尿病網膜症による視覚障害者は35万人前後、失明者は約2万人です。日本の糖尿病患者のうち失明に至る割合が低いのはレーザー治療や硝子体手術が普及しているからです。糖尿病やその予備軍であることを指摘されたら、生活習慣を見直し、内科検査・治療に加え定期的に眼科検査を続けることが大切です。
加齢黄斑変性は網膜の中心部にあたる黄斑部に出血や萎縮を来たし中心視力が低下する疾患で喫煙が危険因子です。近年特殊な生物学的製剤を直接眼に注射する治療法が普及しましたが、低下した視力は回復しません。禁煙を心掛けましょう。
変性近視や失明原因の40%以上を占める視神経疾患や網膜変性症については有効な予防手段や治療法が確立されていないのが現状です。病因解明や治療法の開発が待たれます。
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秋から冬にかけての季節の変わり目は呼吸器にも不調が出やすい時期です。風邪をきっかけに気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD、いわゆるタバコ病)の発作が出たり、肺炎になったりと呼吸器の患者さんが増えます。気管支喘息は患者さんの訴えや症状から総合的に診断しますが、夜間・早朝に咳や息切れなどの症状が出る、冷気や煙の刺激で咳を生じやすい、何らかのアレルギーがある、これらに当てはまる場合はより気管支喘息らしいと言えます。
また息がヒューヒュー、ゼイゼイするといった喘鳴(ぜんめい)がなく、咳のみの症状で風邪の続きのような方もいらっしゃるかもしれません。実はそのまま放置すると気管支喘息へ移行する咳喘息(せきぜんそく)の可能性があります。風邪だと思っていた咳が3週間以上続く場合は医療機関の受診をおすすめします。
気管支喘息の原因は様々ありますが気道の慢性炎症であることは確かです。炎症により徐々に気道が狭くなっていきます。こうした変化は症状がない時にも進行しているため、発作時のみの治療では不十分です。炎症を吸入ステロイドで抑えながら発作のない生活を送ることが治療の目標になります。ステロイドの副作用を気にされる方もいらっしゃるかもしれませんが、含有量が少なく肺に直接作用する吸入薬は全く問題にならない程度ですから安心してください。
多くの方は吸入薬にあまり馴染みがないことでしょう。薬が内蔵されたポケットサイズの器具を直接くわえて吸い込むだけです。実物を手に取りながら薬局の薬剤師さんにじっくり教えてもらうことを強くおすすめします。使い始めだけでなく、その後も使い方が合っているか時々ぜひ確認してもらって下さい。ここ数年で気管支喘息の吸入薬は種類が増えました。ご自分に合った吸入薬で発作のない快適な生活を目指しましょう。
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樹木希林さんがある新聞のコラムに遺した言葉です。ご近所に居そうなとても身近に感じる、それでいて大女優さん、ご冥福をお祈りいたします。とても″気配り〟のできる方かと、″終活〟も見事であったとのこと、そこはゾーンに居る方のお話し、そのまま真似出来るものでは無いのですが、お考え頂きたい現実の案件が少なからずあります。
お一人目は認知症で訪問診療の90歳代の方。乳癌が皮膚肺に再発、身寄りはご同胞、お看取りに際して引き取れないとのこと。病院も困り果てて役場に連絡、行き倒れとして対処、役場がお葬式と荼毘、ご担当のご尽力によりお骨はやっとお引取りになられたとのこと。
お二人目はお家での行き倒れの方。癌が進行ご同胞が発見、入院中お看取りを含めご家族の来院無し。断絶して久しいとのこと、最後まで子に会いたいと懇願されておりました。
お二人とも取り返しのつかないことがあったのでしょう、人生の最後に立ち会う時、良くも悪くも因果応報を目の当たりにします。
″日頃お話し合いが出来る関係〟がとても大切なのだと思います。″終活〟そろそろかなと心当たりのある方は、具体的にご家族と話題にしてみてください。在宅なのか施設を探すのか?食べられなくなった時は?お看取りは?お葬式は?角が立ったら?ひと休み!皆が真剣に考えたから!と思いましょう。いわゆる最終ガイドラインでも『本人の意志』『話し合いを繰り返し行う』が結論です。お迎えばかりはご自分では仕切れないので。
追伸:平成28年1月″免疫療法〟でご紹介した″本庶 佑〟先生がノーベル医学生理学賞を受賞なさいました、おめでとうございます。
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平成31年4月より漢方専門医の資格を有することになりました。東北大学病院漢方内科で3年間研修を行ってきました。耳鼻咽喉科の病気を、適宜漢方薬を併用し、治療を行ってまいります。
漢方薬は100種類以上ありますが、私が主に使っている漢方薬は、30~40種類くらいです。耳鳴りには、釣藤散(ちょうとうさん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)など、鼻水・鼻閉には、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、麻黄附細辛湯(まおうぶしさいしんとう)など。患者さんの体力・年齢・証(その人の状態や個人差をあらわすもの)によって使い分けをします。平成30年に東北大学漢方内科で「論より証拠の漢方処方」(日本医事新報社、総著:高山
真)という本を出版し、私は耳鼻咽喉科領域のアレルギー性鼻炎、口内炎、咽喉頭異常感の部門を担当、執筆しました。興味のある方は、ぜひ読んでいただければと思います。
漢方の病気の考え方は、本人の症状が、体に何が悪いか、何が多すぎるか(巡り悪いか)を把握して、補うか、排除するかで薬を選択します。私が大学で学んだ漢方治療は、他の症状や冷え、ほてりの有無、脈診、舌診、腹診から、虚実、気血水を鑑別し(急性熱性疾患は除く)、それをもとに漢方薬を選び、数日内服してもらい効果を判定します。漢方薬の効果には、熱性疾患では2~4日で判断します。非熱性疾患では1~2週間、長くても4~6週間でその薬は合っているか判断できます。長期間飲み続ける必要はありません。体の不足分が補って満たされれば(症状が改善すれば)、減薬もしくは休薬します。良くならなければ、証を見直し、別の漢方薬に切り替えるという考え方です。
なお、大学病院で耳鼻咽喉科領域以外の症状も、外来患者様をとおして診療してきましたが、当クリニックでは申し訳ございませんが、耳鼻咽喉科領域を原則として治療させてください。他の領域はその科専門の医師や、大学病院の漢方内科への紹介をお願いしております。
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毎年このシーズンはインフルエンザが流行します。インフルエンザでは、咳やのどの痛みだけでなく、高熱、全身のだるさ、食欲不振などの全身症状が強いのが特徴で、重症化する事もあります。重症化しやすいとされる人は、高齢者、幼児、妊娠中の女性、糖尿病や慢性呼吸器疾患、慢性心疾患等の持病のある方と言われています。
インフルエンザにかからないようにするためにはマスクの着用のみで十分でしょうか。答えは″いいえ〟です。理由は、インフルエンザがどのようにして感染するのかを知る必要があります。
インフルエンザウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染の2つがあります。飛沫感染とは、インフルエンザにかかっている人がくしゃみや咳をして、つばなどの飛沫と一緒にウイルスが放出され、別の人がそのウイルスを口や鼻から吸い込み感染することを言います。接触感染は、咳を手で押さえた後、鼻水を手でぬぐった後に、ドアノブ、机、パソコンのキーボード等に触れると、その触れた場所にウイルスを含んだ飛沫が付着する場合があります。その場所に別の人が手で触れ、更にその手で自分の鼻、口に再び触れることにより、口鼻の粘膜を通じてウイルスが体内に入り感染します。これを接触感染といいます。
このため、マスクの着用のみではインフルエンザ感染対策には不十分です。私たちは毎日、様々なものに触れていますが、それらに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。マスクの着用のみでなく、食事や調理の前などしっかり手洗い、うがいをしてインフルエンザを予防しましょう。
(参考資料:政府広報オンライン)
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帯状疱疹とは突然、体の一部分、特に胸やおなかにチクチク、ピリピリとした痛みが起こります。しばらくすると、その部分が赤くなり、小さな水ぶくれが多数できます。その後はしだいに水ぶくれが拡がって、止まります。そして2~3週間で黒かっ色のかさぶたとなり、4~6週間でかさぶたがとれて、痛みも一緒に消えて無くなりますが、まれに痛みが続くことがあります。これは60歳以上の人に多くみられ、帯状疱疹後神経痛といわれます。原因は水痘・帯状疱疹ウイルスです。子どもの頃にこのウイルスによって水痘(水ぼうそう)という病気になります。一度かかると免疫ができるため、またかかることはありません。
しかし、治った後もウイルスは体に潜んでいて、数十年後に過労、老化、病気、体力の低下などが誘因となって、再びウイルスが活動を始め、体のいろいろな部位に水ぶくれができます。
治療としてはウイルスが増えるのを抑える抗ウイルス薬を使います。次に皮膚の保護と再生を促すために塗り薬も使います。痛みに対しては消炎鎮痛剤を使います。もちろん、できるだけ早く治療することが大事です。日常生活では十分な栄養と休養をとることです。入浴はできますが、お酒はやめてください。それから、人に触ってもうつりませんが、赤ちゃんや妊婦の人に触ると水痘になることがあります。気をつけてください。
最後に帯状疱疹の予防、特に帯状疱疹後神経痛の発症を防ぐためには、50歳以上の人は水痘ワクチンの予防接種をすることが大事です。ワクチンは全身性副反応が少なく、安全性も高く、一度接種するとウイルスに対する免疫力が強くなります。神経痛はかなり苦しく、つらいものです。それを防ぐためにぜひ、水痘ワクチンの予防接種をしてください。
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先日7歳の男の子が、右下腿痛(ふくらはぎ付近)を訴え母親とともに来院しました。右下腿に腫れや圧痛はなく、レントゲン検査でも特に異常を認めません。特に問題はないようですねと話しますと、「成長痛」でしょうかと母親に尋ねられました。
成長痛とは、12歳ぐらいまでの子どもの下肢に多い痛みで、筋肉、関節、骨などに特に異常を認めず、心理的な不安定によって生ずる痛みと言われています。夜間に痛みを訴え翌日には軽快し、2~3日で痛みは消失することが多いようです。治療は特になく、子どもの訴えを聞きながら痛みがなくなるまで少々忍耐強く待つことになります。この子の場合も、様子を見ていて4~5日で下腿痛は消失しました。母親が心配した「成長痛」だったようです。
しかし、子どもの下肢痛はその他の原因で起こることもあります。例えば、股関節からふともも、膝にかけての痛みを訴える単純性股関節炎、膝のおさらの下側で骨が出っ張ってきて痛むオスグット病、踵が痛むシーバー病(いずれも骨端症)、アキレス腱が痛むアキレス腱炎、足の内側でうちくるぶしのやや前方が痛む有痛性外脛骨など、原因をはっきりさせて治療することが大切なのは言うまでもありません。
さらに最近、バスケットボール、水泳などのスポーツクラブでの専門指導の低年齢化による、使い過ぎに伴う筋肉、靭帯の痛みも見過ごしてはならないと感じております。保護者の方は、お子さんが頑張り過ぎないよう気をつけて見守ってください。
元気にしていたお子さんが下肢痛を訴えたとき、それが成長痛であることも多いのですが、他の原因による痛みも考えられます。心配になったときにはどうぞご相談ください。
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検診などで脂質(コレステロールや中性脂肪)の異常を指摘された方も多いかと思います。最近は脂質異常症という名前で総称され、日本動脈硬化学会の診断基準では空腹時の検査でLDLコレステロール(悪玉)が140mg/dl以上あるいはHDLコレステロール(善玉)が40mg/dl未満あるいはトリグリセライド(中性脂肪)が150mg/dl以上等の場合となっています。ただ、この診断基準も以前に日本人間ドック学会の提唱した基準値や他の学会(他国も含む)の提唱する基準値等とも異なっており、昨年某週刊誌の記事(偏りが有り、賛同できませんが)で話題になったように議論の余地もあり、見直される可能性もあるかと思われます。
脂質異常症があっても、それだけではすぐに症状が出ることはほとんどありません。しかし、LDLコレステロール等を高い状態で放置していると動脈硬化が起こりやすく、特に冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症など)が起こる確率が上がり、脳血管疾患や慢性腎臓病、末梢の動脈疾患等への悪影響を及ぼすことは間違いありません。喫煙されている方は禁煙し、食事や運動といった生活習慣の見直し等を図り、できれば医療機関等の受診を検討してください。脂質異常症の原因には遺伝的な要因も高く、定期的な検査や薬物療法が必要な場合も少なくありません。現在、日本医師会の勧める脂質の管理目標も年齢、性別、血圧、基礎疾患、喫煙の有無等により細かく分かれており、患者さんの病状に合わせた脂質のコントロールや治療を相談させていただくことになるかと思います。
特に以前に心臓の病気を起こされた方や検診・脳ドックで心電図異常や動脈硬化などを指摘された方、高血圧や糖尿病あるいは腎機能低下等の可能性を指摘された方は脂質異常が軽度でも油断はできません。また、他の病気が無くてもLDLコレステロールが180mg/dl以上あるいは中性脂肪の異常高値(例えば300mg/dl以上)等を指摘された方等は放置しないで早期に医療機関等を受診してください。
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ドライアイ
油井眼科 油井 秀夫
ドライアイは目を守るのに欠かせない涙の量が不足したり、涙の質のバランスが崩れることによって、涙が均等に行きわたらなくなり目の表面に傷が生じる病気です。
ドライアイの症状として代表的なものは「ものがかすんで見える」「目が痛い」「重たい感じがする」「目がゴロゴロする」「光を見るとまぶしい」「なんとなく目に不快感がある」です。ドライアイの原因として涙の量が足りなくなって目の表面における涙の量が不安定になります。パソコンやスマホの長時間使用、エアコンに長時間あたる、コンタクトレンズの使用などがその原因としてあげられます。
瞬きは一分間で通常20回前後といわれていますが、パソコンやスマホの利用時は6回前後と減少します。特にパソコン使用時で気をつけていただきたいこととして、例えば、パソコンの画面を目より下におく、パソコン使用時はこまめに休憩をとり意識的に瞬きをするように心がける。
エアコン使用時では、エアコンの風が直接あたらないようにする。エアコンが効いている室内は乾燥しやすいので加湿を心がける。
コンタクトレンズは正しい使い方を守る。コンタクトレンズをしている方はどうしてもしていない方に比べ涙が蒸発して減りやすくなってしまいます。
加齢によるものは年齢とともに涙を作る涙腺の分泌機能が低下し涙の量が減ることが知られています。その他ではマイボーム腺の機能不全による涙液の蒸発亢進があります。
マイボーム腺とは上下まぶた辺縁に開口部がある皮脂腺のひとつです。この開口部から油脂が分泌されることで涙液の最上層である脂肪層が薄くなったり消失したりして涙液の蒸発が亢進し、眼表面の涙液が不安定化するということです。
現在ドライアイの症状を改善させる色々な点眼薬が増えています。ドライアイの症状がひどかったり、いつまでも長引くような場合には一度眼科の受診をお勧めします。
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ラジオ体操
同済病院 三浦 徳之
日本人に最も親しまれている運動であるラジオ体操の起源は、昭和天皇の即位記念事業として昭和3年に「国民健康体操」として開始されました。これが初代ラジオ体操で「いつでも」「どこでも」「誰でも」できるものという基本理念に基づき作成されました。第2次世界大戦後、初代ラジオ体操はGHQにより廃止されました。戦後すぐ昭和21年に2代目ラジオ体操が放送されましたが、時期的な問題もあり浸透せず中止となりました。
しかし、物質的にも精神的にもゆとりが出てきた昭和25年「ラジオ体操の復活を望む」という世論に後押しされる形で、簡易保険局、NHK、文部省関係者が参集し、昭和26年に現行の「ラジオ体操第1」が制定されました。当時またたく間に大ブームとなり、翌年の昭和27年には、要望の出ていた「職場の人々」を対象とした「ラジオ体操第2」が制定。放送が開始されました。
「ラジオ体操第1」は老若男女を対象として、美しい動きで構成され日本人が陥りがちな「姿勢不良」や「膝の曲がり」を改善することが大きな目的です。
これに対して「ラジオ体操第2」は主に職場に勤労する人を対象としていて、「疲労回復」や「能率増進」をはかることが目的のため、第1より高度な動きで構成され、アクティブで疲れにくい体に導きます。
第1と第2共通の特徴として、動きが左右均等で普段動かさない全身の筋肉と関節を、まんべんなく動かすように構成されており、体のゆがみがとれプロポーションが整います。横曲げや回旋、ねじる運動など腹部体幹の筋肉を刺激する動きや深呼吸、胸を反らす動きが盛り込まれており、便秘解消や心肺機能を向上させます。場所を選ばず特別な道具も必要なく、いつでもどこでも誰でも無理なくできるラジオ体操を始めてみませんか。
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ケガをした時や急な病気で具合が悪くなった時、私たちは医療機関を受診します。皆さんは、ケガや病気の状態・程度で、入院するか、通院で治療できるかが決まると思っていませんか。確かにその要素は大きいのですが、それ以外にも様々な要素があります。
医療機関のベッド(病床といいます)には、急性期病床、回復期病床、療養病床などの種類があり、どの病床をどれだけ備えているかによって医療機関の性質が大きく違ってきます。ケガ・病気の内容によっては、急性期病床の病院では入院できないが、亜急性期病床や回復期病床ならば入院できることがあります。同居家族の有無によって入院する・しないが決まることもあります。患者さんや家族が「不安なので入院したい」と訴えても、急性期病床では治療上入院が必要でなければ入院できません。
一般的には、急性期病床⇒(亜急性期病床)⇒ 回復期病床、急性期病床⇒(亜急性期病床または回復期病床)⇒ 療養病床の順に、転院または転床をしながら、社会復帰が可能になれば退院します。急性期病床では2~3週間程度、亜急性期病床や回復期病床では2カ月と、入院可能な期間に違いがあり、療養病床では入院期間に制限が設けられている訳ではありませんが、必要な医療レベルが低い患者さんはなるべく退院に向かわせるようにと、医療機関側に動機づけさせるべく、医療レベルに応じた入院点数が設定されています。
医療機関側としても通院可能な場合はなるべく通院で治療したいと考えますが、通院による体の負担が大きい場合、通院のための交通手段がない場合などは入院になります。ケガや病気の時は治療だけではなく介護も必要になり、同居家族など介護が可能な人の有無により、入院する・しないが決まることもあります。
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天高く馬肥ゆる秋、新米・サンマ・鮭・りんご・栗・ブドウ・柿・キノコなど美味しいものが旬を迎えます。ここ数年、運動不足でお腹の出てきた私には大変困った季節です。
ダイエット方法としては、バランスの良いカロリー制限・適度な運動が基本ですが、最近、極端な糖質制限食(低炭水化物食)が流行しており大変心配しております。「炭水化物を抜けば、何をどれだけ食べてもよい」と言う、とても簡単で夢のようなやり方です。きちんと実行すると短期間でやせられますので人気の高いダイエット法となっています。
しかし、その陰には大きな危険が隠れています。人には一日170gの糖が必要とされています。そのうちの120~130は脳で消費され、30gは全身に酸素を運ぶ赤血球のエネルギー源として消費されます。糖質を制限してしまうと、代わりに蛋白質を構成しているアミノ酸を、肝臓で糖に作り変えるというシステムが働き始めます。体の維持に必要なエネルギーを食事中の蛋白質や脂質で補うのは不可能なため、それを補うために筋肉を分解します。結局筋肉量はどんどん減少していきます。体力も低下し骨ももろくなります。また肉料理の取り過ぎでコレステロール値が上昇し、動脈硬化の危険性が高くなり、脳梗塞・心筋梗塞となります。さらに免疫機能も低下してしまいます。
健康的にダイエットするには、適量の糖分の摂取と軽い運動が必要です。総エネルギーの45~60%を糖分とする「ゆるーい」糖質制限としましょう。当然、菓子類や菓子パンは減らさなければなりません。ご近所の方がいらっしゃってもお菓子を出すのはお互いの健康のために慎みましょう。私も減量に努めます。皆さんも、ご家族・ご近所さんと健康についてよく話し合い、より良い食生活環境を作りましょう。
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なぜ薬を飲むのでしょう?病気や怪我を治すためでしょうか?最近はポリファーマシー(多剤併用)といってたくさんの薬を飲んでいる人が多くなっています。ご存知のように薬には作用だけではなく副作用もありますが、ポリファーマシーの人は副作用が起きやすくなります。もう一度、自分が飲んでいる薬は何のためかを考えてみましょう。
薬は大きく分けると便宜上、次の3種類だと考えられます。それらの中には役割を兼ねているものもありますが、とりあえず。
①病気を治す薬
例えば、抗生剤や抗がん剤は病気を治す薬の代表的なものです。ただし、これらには病気を完全に治すものと、病気の進行を遅らせるものがあります。
②病気を予防する薬
もっとも多く処方されている薬がこのタイプです。例えば、高血圧を想定してみましょう。確かに上の血圧が200を超えれば頭が痛くなったり、肩が苦しくなったりしますが、血圧が高いこと自体で困ることはあまりありません。しかし、高血圧の状態が続くと将来的に血管がもろくなったり、心臓が弱くなったりします。これは血糖値やコレステロールも同じで、数値が高いことですぐに健康を脅かすわけではありません。将来起こるかもしれない脳卒中や心臓病を少しでも予防することが主な目的です。骨粗しょう症の薬もここに分けられます。
③つらさを緩和する
痛み止めを代表とする薬です。かゆみ止めや風邪の時の咳止め、鼻水の薬、花粉症の薬もこのタイプです。
今日、平均寿命が伸び、同時に多くの病気を抱えてしまう人が増えた以上、ポリファーマシーの問題は避けて通ることができなくなりました。人それぞれの価値観の中で、どの薬を優先させるか、それともある程度の副作用を覚悟で多剤併用するかを考えてみてはいかがでしょうか?
(参考図書:「医者のいうことは話し半分でいい」尾藤 誠司PHP 2015年)
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人生においては、何らかの理由で自分の力のみで日常生活を維持することが困難となるときがあります。もし病気が原因で、継続した昼夜の医療行為による治療が必要な場合は病院に入院しなくてはなりません。
一方、入院の必要はなく、介護が主体となる場合は、状況に応じて何らかの介護施設(介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・介護療養型医療施設)や居宅系施設(グループホーム・有料老人ホームなど)、あるいはサービス付高齢者向け住宅といったところでの生活が検討されます。
さて、高齢の方の人口は今後更に増えていきます。かといって、それに応じた形でこれらの施設をどんどん増やしていくということは現実的に不可能です。したがって、国は何とか自宅での生活を維持し続けることはできないかと模索して来ました。訪問診療・訪問看護・訪問介護・訪問リハビリといったものに力が入れられつつありますが、まだまだ十分ではありません。
小規模多機能型居宅介護は、そのような中、これまでは自宅での生活維持は非常に難しいと思われていたような状況の場合でも、何とか対応できるように、と工夫された介護サービスです。具体的には、登録した最大29名までの介護サービスを必要とする市民の方に、24時間・365日、訪問サービス(事業所の職員が訪問)・通所サービス(事業所のデイサービスでのリハビリや入浴など)・宿泊サービス(事業所へのショートステイ)の3つを組み合わせて、より自由度の高い介護支援を、原則定額で提供するというものです。
寒くなってきました。風邪などの感染症にかからないように手洗いなどに気を付けると同時に、自身の免疫力を高めるため、規則正しい生活と栄養摂取に心掛けましょう。
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外来で予防注射をする際、色々な質問を頂きます。多い質問とその答えを書いてみました。
注射した箇所を揉む、揉まない?
年配の皆さんは注射したらその後をよく揉むように教わったと思いますが、今は揉まないことになっています。揉むことに意味がない上に、強く揉み過ぎて赤くなったり、皮下出血を起こしたりすることがあるので、軽く押さえるだけで良いのです。また、ほとんどの予防注射は皮下注射で、注射する場所には大きな血管は無く、針が血管の中に入ることはまず考えられませんので、出血はほとんどしません。従って、採血の際のように何分間か抑える必要もありません。
お風呂に入ってもいい?
昔は注射をしたら風呂に入らないように注意されましたが、今は注射してから1時間経てば入っても構わないことになっています。昔は風呂の衛生上の問題などから注射したところからばい菌が入る心配がある、風呂が外にあり、風邪を引いて熱を出すなどの危険があるため入浴が禁止されていました。ただし、予防注射ではなく、治療などで関節に注射した場合は今も入浴は禁止です。
接種後の注意は?
注射後30分は様子を見るように注意書きがあります。これは、極めて稀とはいえ重症のアレルギー反応を起こした場合、いち早く発見し、適切に対処するためです。子どもの場合は、顔色が悪い、不機嫌、などの様子に注意します。また、予防注射とは関係のないアレルギー反応(蕁麻疹(じんましん)など)を起こさないよう、注射後30分は、お菓子などの飲食は避けてください。
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骨粗しょう症になると骨がもろくなり、ちょっとしたことで骨折しやすくなります。女性は閉経で女性ホルモンが下がるとともに骨密度が低下します。この為、更年期以降、多くの女性にとって骨粗しょう症は身近な病気となります。50歳以上の9人に1人、60歳以上で3人に1人、70歳以上では2人に1人がこの病気にかかっています。
骨粗しょう症になると、背骨(椎体)の骨折が起こりやすくなります。背中が曲がるのは、年のせいではありません。病気の為だったのです。将来の健康のために骨粗しょう症による骨折の危険性を覚えておきましょう。例えば、容姿が変わる、背骨が折れて背中が曲がる等が挙げられます。更に、骨折で寝たきりになると、思ったように動けず、家族に介護の負担をかける、医療費が多く必要になる、死亡のリスクが跳ね上がる等につながります。まずは、自分の骨密度を計測してみましょう。これは近くの医療機関で計測してもらえます。
骨を強くする為には、運動をする習慣が重要です。
開眼片足立ちや、椅子などにつかまって、床につかない程度に片足を上げる。スクワットを1回当たり10から20秒かけ、6から10回を3セット行う等がおすすめです。
次の兆候があれば、骨粗しょう症が疑われます。
〇以前より2㎝以上身長が縮んだ
〇最近姿勢が悪くなり、腰や背中が曲がってきた
〇腰や背中に重い感じや痛みがある
一つでも当てはまる方は、背骨の骨折が疑われます。
骨粗しょう症は自覚症状が全くないことが多いので、当てはまる項目がなくても、気になる方は医師に相談して下さい。
骨粗しょう症を放っておいて、繰り返し骨折が起きないように女性の健康寿命を守りましょう。
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人は日常生活の中で様々な痛みを感じます。この季節、雪かきの後に肩や腕、腰に感じるのは筋肉痛。日頃からパソコンやスマートフォンにのめりこんでうなじや首、肩が痛むのは筋肉痛と血流障害が主な原因。生活や職場の環境で、長時間騒音にさらされることで起こる耳鳴りやめまい、そして頭痛もあります。生理痛や歯に関わる傷み、ちょっとした切り傷から雑菌が入り、延焼を起こした時の痛みも急性期にはつらいものです。
原因別でお薬を使用していますか?「いたい」というキーワードだけで消炎鎮痛剤を長時間飲み続ければ、消化管粘膜を傷つけてしまいます。筋肉の「張り」を和らげる薬も漫然と効果を検討せずに飲み続けると、肝臓の機能に影響を及ぼします。
昔痛めた骨折の後遺症や大きな外傷、時間が経っても続く手術後の傷の痛み、何度も繰り返す帯状疱疹(つづらご)など慢性的な痛みは消炎鎮痛剤では効果がありません。神経障害性陣痛といって中枢神経に伝わる刺激を抑えてあげなければ痛みはうまくコントロールできないからです。それらの慢性的な痛み(疼痛)にはオピオイド(医療用麻薬)との合剤や、鎮痛補助剤として抗不安薬や抗けいれん薬等を用います。
あなたの痛み、いつ頃から始まりどのような時にどのような痛み方をするのか、痛みの持続時間等を記録して下さい。神経障害性疼痛の特徴は痛みが走る、電撃でしびれる等の表現が当てはまります。「ひりひり」「びりびり」「ずきずき」「ずくずく」等、濁音が入る傷みはより一層激しい痛みです。上手くかかりつけの医師に痛みを伝えて痛みの種類を考えましょう。長年悩んだつらい痛みの改善につながります。
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